院長コラム 便潜血検査は有用か
- 大腸がんの発見方法
大腸がんを発見する方法は次のものがあります。
- 大腸内視鏡
- 便潜血検査
- バリウム
- CT大腸鏡(コロノグラフィー)
- 大腸カプセル内視鏡
それぞれ長所・短所があります。
大腸がんの発見には、大腸内視鏡と便潜血検査を適切に組み合わせるのがベストです。
5-2. 便潜血検査は有用か
便潜血検査は大変有用な検査です。
便潜血検査は、便に混ざる目に見えない出血を調べる検査です。
2回を1セットとして行うのが一般的です。
「体に負担がなく、食事制限がなく、安価である」というのが大きなメリットです。
①便潜血は、大腸がんで命を落とす危険を減らすことができるか
便潜血検査を毎年(annual)受けると、大腸がんで命を落とす危険性を32%も減らすことができると、報告されています。1年おきの(biennial)検査であっても、22%減らすことができます1。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1300720
便潜血検査で大腸がんの診断に至った人のほとんどは、大腸内視鏡を受けて、大腸がんと診断されています。よって、便潜血検査のおかげで大腸がんでなくならずにすんだ人は、大腸内視鏡による恩恵を受けているのです。
②大腸内視鏡との比較
「進行大腸がんの発見率」は、便潜血検査と大腸内視鏡では、同率です。それほど、便潜血検査は有用なのです。しかし、早期がんと進行腺腫*の発見率は大腸内視鏡は便潜血検査の2倍、通常の腺腫†の発見率は大腸内視鏡は便潜血検査の10倍です2。
大腸がんを早期に、できればがんになる前に発見し、大腸がんを予防したい人は、大腸内視鏡を受ける方が良いという事になります。
*進行腺腫とは腺腫のなかでも10mm以上のもの、絨毛成分があるもの、がんになりかけているものをさします。
†通常の腺腫は進行腺腫以外の腺腫をさします。
③便潜血検査が陽性の場合に大腸がんの確率は
便潜血検査が陽性となる確率は6-7%だといわれています。便潜血検査が陽性のうち、3-7%は大腸がんと診断されています3。
そして、その半数が早期がんですので、症状が出てから発見された大腸がんと比べると、早期がんが比較的多いといえます。
便潜血検査陽性の原因として、最も多いのが痔です。
④便潜血検査の精度は
「進行大腸がん」を発見する精度は、1回の便潜血検査で70%ほどです。2回法で行いますと、90%ほどになるので、まずまず高い精度であるといえます。
しかし、粘膜内にとどまる「早期大腸がん」を発見する精度は、1回の便潜血検査で33%ほどです。2回法で行いますと、55%ほどです3。つまり半分の早期がんは、見逃されているということになります。
早期がんに対しての精度は、内視鏡に比べると不十分と考えておいた方がよいでしょう。
⑤便潜血検査が1回だけ陽性の時は、内視鏡は必要か
便潜血検査法は、通常2回行います。1回だけ陰性のときも、内視鏡は必要です。1回目の便潜血検査が陽性のときに、もう一度、便潜血検査をやることは、お勧めできません。
文献
- Shaukat A, Mongin SJ, Geisser MS, et al. Long-term mortality after screening for colorectal cancer. The New England journal of medicine. 2013;369(12):1106-1114.
- Quintero E, Castells A, Bujanda L, et al. Colonoscopy versus fecal immunochemical testing in colorectal-cancer screening. New England Journal of Medicine. 2012;366(8):697-706.
- Morikawa T, Kato J, Yamaji Y, Wada R, Mitsushima T, Shiratori Y. A comparison of the immunochemical fecal occult blood test and total colonoscopy in the asymptomatic population. Gastroenterology. 2005;129(2):422-428.