院長コラム 大腸がんの発見方法 2
大腸がんの発見方法
大腸内視鏡は何が素晴らしいか
②大腸内視鏡はよいことばかりか
大腸内視鏡は、もちろん良いことばかりではありません。
検査には前処置が必要ですし、苦痛が伴う場合があります。時間とコストもかかりますし、まれにですが、腸が傷ついてしまうなどの重大な合併症が起きることもあります。
また、全てのポリープを、見逃しなく見つけることができるわけではありません。
③大腸内視鏡の下剤は苦痛か
大腸内視鏡は検査の前に、下剤を服用して腸をきれいにしないといけません。
通常の方法では下剤の量は2リットルと大量です。個人差はありますが、「おいしくなくて飲めない」「吐き気がする」など訴える方がいます。
大腸内視鏡の検査自体は、セデーションを行うことで、ほとんど苦しくなく受けることができるようになってきましたが、下剤の苦痛を全くなくすことは難しいです。しかし、下剤の苦痛を減らすことは可能です。
④大腸内視鏡の下剤服用の工夫は
大腸内視鏡は、高い精度が求められます。それには、きちんと下剤を服用し大腸をできるだけきれいにしておくことが大切です。
事前に食事の調整を行う、事前に(1か月~1週間前から)軽い下剤を服用し便通を整えておくなどの工夫も大切です。
現在、大腸内視鏡に利用されている下剤は大きく分けて6種類あります。自分に合った下剤を使用していただくことも大事です。とよしま内視鏡クリニックでは下剤の選択肢を増やすことで、患者様に少しでも快適に大腸内視鏡を受けていただく工夫をしております。
特に、腹部膨満感や便秘がある方、糖尿病の方、精神安定剤や血液サラサラの薬を服用している方は、下剤服用などの準備の方法について注意事項がありますので、受診される医療機関に事前に相談しておく必要があります。
とよしま内視鏡クリニックで使用している下剤
✓ニフレック
✓モビプレップ
✓サルプレップ
✓ピコプレップ
✓マグコロールP
✓ビジクリア(錠剤)
それぞれ、服用方法が異なります。また、服用の適した方、服用することができない方がいらっしゃるので、詳細はホームページ(、https://www.ichou.com/archives/6216/)をご覧ください。または、お電話で直接スタッフまでお問い合わせください。
⑤大腸内視鏡に見逃しはないか
大腸内視鏡にはわずかではありますが、大腸がんの見逃しがあります。
大腸のひだに隠れてしまう部分(大腸の屈曲部や横行結腸、S状結腸、直腸など)が見逃されやすい部位です。便がたくさん残っていると見えない部分が多くなります。古い内視鏡機器であると画質が悪いため見つけることができないことがあります。熟練した医師でないと見逃しが多いことも当然です1-3。
大腸ポリープの見逃し率は内視鏡医により違うことが分かっています。また、前がんポリープである大腸腺腫の見逃し率は大腸腺腫の発見率(adenoma detection rate; ADR)と密接に関係していることがわかっています1。このADRは内視鏡医の熟練度の大変重要な指標です4-6。
大腸内視鏡による大腸がんの見逃しを防ぐには、ADRの高い内視鏡医に内視鏡を実施してもらうこと、最新の内視鏡機器を使用してもらうこと、きちんと下剤を服用し大腸をきれいにしておくことが大事です。
そして、この大腸内視鏡の欠点を補うのが便潜血検査です。毎年、大腸内視鏡をやるのは大変ですので、大腸内視鏡をやらない年には便潜血検査をして、組み合わせてやっていくとよいでしょう。
⑥適切な内視鏡フォロー間隔は
大腸内視鏡のフォロー間隔は年齢、大腸内視鏡の所見(ポリープの数・タイプ・大きさ、ポリープの残存の有無)、大腸がんの既往歴、大腸がんの家族歴など、大腸がんのリスクにより、ケースバイケースで考えるとよいでしょう。
また、大腸内視鏡をやらない年は、便潜血検査を受けることをお勧めします。
切除するべきポリープが残存している、あるいはその可能性がある場合や、大腸がんを切除した直後は、1年以内という短い間隔で行うのが望ましいでしょう。
大腸内視鏡の際、腺腫が発見され、すべて切除した場合は、3年以内にフォローすることが、ガイドラインでも推奨されています。腺腫が発見されなかった場合は、3~5年のフォローでよいでしょう。
文献
- Zhao S, Wang S, Pan P, et al. Magnitude, Risk Factors, and Factors Associated With Adenoma Miss Rate of Tandem Colonoscopy: A Systematic Review and Meta-analysis. Gastroenterology. 2019;156(6):1661-1674.e1611.
- Toyoshima O, Nishizawa T, Yoshida S, et al. Expert endoscopists with high adenoma detection rates frequently detect diminutive adenomas in proximal colon. Endoscopy International Open. 2020;08(06):E775-E782.
- Toyoshima O, Yoshida S, Nishizawa T, et al. CF290 for pancolonic chromoendoscopy improved sessile serrated polyp detection and procedure time: a propensity score-matching study. Endoscopy International Open. 2019;7(8):E987-e993.
- Kaminski MF, Regula J, Kraszewska E, et al. Quality indicators for colonoscopy and the risk of interval cancer. New England Journal of Medicine. 2010;362(19):1795-1803.
- Corley DA, Jensen CD, Marks AR, et al. Adenoma Detection Rate and Risk of Colorectal Cancer and Death. New England Journal of Medicine. 2014;370(14):1298-1306.
- Kaminski MF, Wieszczy P, Rupinski M, et al. Increased Rate of Adenoma Detection Associates With Reduced Risk of Colorectal Cancer and Death. Gastroenterology. 2017;153(1):98-105.