バレット食道とは
バレット食道は逆流性食道炎の結果として現れます。通常、食道粘膜は扁平上皮から構成されていますが、胃液の逆流による炎症が繰り返されると、食道扁平上皮が胃壁の細胞である円柱上皮に変化します。 バレット食道では、食道粘膜が胃壁の粘膜にどのくらいまで置き換わっているのかが、疾患の重症度と食道がんの発症リスクを判定する基準となります。変化が全周性に噴門から3cm以上であればLSBE(Long Segment Barrett's Esophagus)、それを満たさない場合はSSBE(Short Segment Barrett's Esophagus)に分類されます。がん化の危険性は、LSBEはSSBEに比べ高いとされており、1年以内にがん化する割合は約0.4%と報告されています。
現在、食道がんは増加傾向にあり、その一因としてバレット食道が注目されているため注意が必要です。逆流性食道炎患者の増加、食生活の欧米化、肥満の増加、ピロリ菌感染率の低下や除菌治療の普及などにより、今後バレットがんの増加が懸念されています。ただし、日本人の食道がんはいまだに多くが扁平上皮がんであり、バレットがんではない普通の食道がんが主体です。パレット食道がんは日本人にはかなり珍しいがんといえます。
バレット食道の原因
バレット食道は胃液が食道に逆流することによって引き起こされます。食道粘膜は胃液の刺激に弱いため、胃液に継続してさらされる影響により食道粘膜に炎症が生じ、逆流性食道炎が発生します。何度も炎症が治まったり再発したりすると、食道の扁平上皮が胃の円柱上皮に変化し、バレット食道の形成につながります。
近年、食生活の変化などが影響し、逆流性食道炎の発症が増加しています。症状を放置すると、バレット食道に進行し、食道がんのリスクが上昇する可能性があるため注意が必要です。
バレット食道は逆流性食道炎に由来する疾患ですので、逆流性食道炎と同様の症状がバレット食道でも見られることが多くあります。一方、逆流があっても、患者様によっては症状がほとんど現れない場合もあります。
バレット食道の検査・診断
バレット食道の原因は逆流性食道炎です。従って、最初に症状や既往症、生活習慣などを問診で詳しく伺います。その結果、逆流性食道炎が考えられる場合は、胃カメラで食道と胃の入り口を調べます。がんが疑わしい場合は、病理検査のために検体を採取することもあります。バレット食道が確認されたら、定期的に胃カメラを行い、経過を観察します。
胃カメラ検査についてバレット食道の治療
円柱状に上皮化した食道粘膜を元の扁平上皮に戻す治療法は、残念ながらまだないのが現状です。逆流性食道炎を治療して、できるだけバレット食道が進行しないようにするには、以下の生活習慣の改善が重要です。過食や飲み過ぎ、脂っこい食事や食物繊維の多い食事、甘いお菓子を控え、喫煙と飲酒を制限し、刺激物を避けることなどです。また、肥満を解消し、腹部を圧迫するベルトや前屈姿勢を避けること、食べてすぐ寝ないことも効果的です。
バレット食道の予防
バレット食道においては、脂っこい食事(揚げ物、ステーキ、ラーメン)、食物繊維の多い食品(サツマイモ)、または甘いお菓子(チョコレート、あんこ、ケーキ)や香辛料などの刺激物の摂取が胸焼けの症状を悪化させる可能性がありますので、これらの食品は適量に抑えることが重要です。同時に、早食いや暴飲暴食も避けることが必須です。さらに、カフェインやアルコールは胃酸の分泌を増加させ、噴門部の筋肉を緩めさせてしまうため、これらにも注意してください。