過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome: IBS)は、反復する下痢や便秘、腹部の張りや不快感、そして排便時に腹痛を伴う特徴的な慢性症候群です。血便や激しい下痢があるような場合は過敏性腸症候群とはいいません。命に直接かかわることはありませんが、この症状によりトイレに関連する問題が慢性的に頻発するため、生活の質が著しく低下することがあります。
20代から30代の比較的若い方、特に男性に多く見られ、様々な検査を行っても器質的異常が見つからないのが特徴です。そのため、過敏性腸症候群は病気ではなく、症候群と呼ばれます。
過敏性腸症候群の原因
原因は特定されていませんが、不安や緊張、社会的・心理的なストレス、食生活や摂取内容、腸内細菌叢の変化などが症状を悪化させる要因として知られています。消化管、特に腸は脳と密接に連携しながら機能しており、これらの悪化要因が複雑に作用することで、脳内で腸を制御する物質の産生が乱れたり、脳と腸を結ぶ自律神経が乱れたりする可能性があります。
その結果、大腸の蠕動運動などの運動機能が低下して排便異常が生じたり、大腸や脳の知覚機能の異常によって、痛みや不快感などの症状が生じたりすると考えられています。
過敏性腸症候群の症状
原因は特定されていませんが、不安や緊張、社会的・心理的なストレス、食生活や摂取内容、腸内細菌叢の変化などが症状を悪化させる要因として知られています。消化管、特に腸は脳と密接に連携しながら機能しており、これらの悪化要因が複雑に作用することで、脳内で腸を制御する物質の産生が乱れたり、脳と腸を結ぶ自律神経が乱れたりする可能性があります。
その結果、大腸の蠕動運動などの運動機能が低下して排便異常が生じたり、大腸や脳の知覚機能の異常によって、痛みや不快感などの症状が生じたりすると考えられています。
過敏性腸症候群の診断・検査
過敏性腸症候群の診断は、単に症状だけから行うことはできません。同様の症状を引き起こす他の器質的、全身的、内分泌的な疾患がないことを確認し、異なる疾患の可能性を排除するために様々な検査が行われます。なお、感染性腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、大腸がんなどの腸の疾患、糖尿病などの全身の疾患、甲状腺などの内分泌の異常が類似の症状を引き起こす可能性があります。
これらの器質的、全身的、内分泌的な異常が確認されない場合、患者様の他の病態を考慮しつつ、国際消化器病学会が策定したRomeIV基準に基づいて過敏性腸症候群の診断が行われます。
診察について
症状、重症度、発症期間、既往歴、および服薬歴などを詳しく問診します。腹部の症状が著しい場合には、触診や聴診を行い、腹部の状態を確認します。
検査について
過敏性腸症候群の診断において、当院では症状の原因となる他の疾患がないことを確認するために、様々な検査を行います。
血液検査では、炎症の度合いや状態、感染の有無、貧血の有無、そして消化器官の状態などを確認します。また、便検査では細菌感染の有無を調べることもあります。腹部エコー検査で腸以外の部分に異常がないかを確認することも大切です。
大腸カメラ検査は、大腸粘膜の状態を詳しく観察し、がん、ポリープ、炎症によるびらんや潰瘍、および他の特有の病変が存在するかどうかを確認します。懸念される病変が見つかった場合は、確定診断のために組織標本を採取して病理検査を行います。 当院では、内視鏡検査専門の医師陣が、丁寧かつ苦痛の少ない大腸カメラ検査を行っています。
これらの検査の結果、器質性疾患、全身性疾患、内分泌疾患が認められない場合は、国際消化器病学会が策定したRomeIV基準に則って、患者様の他の病態を総合的に評価した上で過敏性腸症候群と診断します。
過敏性腸症候群の治療
過敏性腸症候群は、急を要するほどの生命を脅かす疾患ではありませんが、その症状が生活の質を低下させるものです。従って、個々の患者様に合わせた治療によって、症状の発現を抑えつつ、できるだけ元の日常生活に戻ることが重要です。
この疾患は生活習慣やストレスと密接に関係しており、治療法は主に生活習慣の改善と薬物療法の2つが用いられます。ただし、症状が治まったとしても再発が頻繁に見られ、治療には時間がかかる傾向があるため、根気強く治療を続けることが必要です。
生活リズム習慣の改善(食事療法、運動療法など)
脂肪やたんぱく質の過剰摂取、暴飲暴食、就寝直前の食事、不規則な食事時間など、不健康な食習慣は避け、均衡の取れた規則正しい食事が重要です。特に過食、過度なアルコール摂取、刺激物の過剰摂取は避け、節制が必要です。 精神的なストレス、緊張、不安、睡眠不足、不規則な睡眠、過労なども症状を悪化させる要因です。
ストレスや不安を解消するためには、ストレス解消方法を見つけ、ストレスを溜め込まないようにする必要があります。また、入浴や適度な休息で疲れを癒し、規則正しい睡眠と起床を習慣づけてください。 さらに、定期的な適度な運動、特にウォーキングは自律神経の調整を助け、腸に適度な刺激を与え、活動を正常化する助けになります。 なるべく無理なく続けられる範囲で運動習慣を身につけましょう。
内服治療
治療として、生活習慣の改善だけでは十分でない場合や、症状が著しい場合には、内服治療による薬物療法が必要となります。下痢型、便秘型、混合型、分類不能型によって処方される薬物は異なり、主に腸管の運動を改善する薬、便の硬さを調整する薬、腸内細菌叢を調整する薬が処方されます。患者様の状態によっては、これらの西洋薬に加えて漢方薬が処方されることもあります。心理的・情緒的な要因が影響する場合には、一時的に抗不安薬や抗うつ薬が検討されることもあります。
この疾患は消化管に目に見える異常がないため、完全な治癒の判断は難しく、症状の変化に合わせて薬の調整を行いながら、継続的に服用する必要があります。