虚血性腸炎

虚血性腸炎 Ischemic enteritis

虚血性腸炎とは

大腸の一部の血管において血流が低下し(虚血)、それによって大腸粘膜が損傷され、急速に粘膜障害が進行することによって引き起こされる疾患です。この病態が現れる際、多くの場合においては大腸左側の下行結腸周辺に症状が顕著に現れます。

虚血性腸炎の主な症状

3大症状としては、腹痛、下痢、血便があります。典型的には、急激に発症する激しい腹痛(意識を失いそうになる人もいます)、それに続く下痢、そして、血便に至ります便器が真っ赤に染まるほどの出血が見られることもあり、その驚きから救急車を要請する患者様も珍しくありません。女性に多く、便秘の方や下腹部の手術(帝王切開や子宮・卵巣の手術)を受けたことのある方に発症することが多いです。
発作の多くは夜8時から朝8時までに起こります。通常は安静にしていれば症状は回復しますが、症状が進行すると敗血症など重篤な疾患につながることもあるため、早期の受診が大切です。

虚血性腸炎と症状が似ている疾患

虚血性腸炎に起因する腹痛、下痢、血便は、この疾患だけに特有のものではなく、多くの大腸疾患で共通して見られます。虚血性腸炎と確実に診断するためには、大腸カメラ検査によって病変を確認することが重要です。なお、虚血していると腸管が脆弱であるため、穿孔をきたすこともあります。検査時には十分な注意が必要です。

大腸がん

大腸がんは初期段階ではほとんど自覚症状がないことが一般的ですが、S状結腸や直腸にがんができると血便や便秘、下痢、腹痛が現れることがあります。確定診断には大腸カメラ検査が必要です。

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クローン病

国から指定された難病で、口から肛門までの消化管全体に炎症を引き起こす可能性のある疾患です。どこにでも発症し得ますが、特に起こりやすいのは大腸側の小腸から、小腸側の大腸にかけてです。その結果、慢性的な血便、下痢、腹痛などの症状が現れます。大腸での炎症が疑われる場合には、大腸カメラ検査が選択されます。

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潰瘍性大腸炎

国から指定された難病で、典型的には、直腸を起点として小腸との接合部まで、炎症に伴う潰瘍やびらんが連続して発生する疾患です。主な症状には慢性的な血便、下痢、腹痛が含まれます。この疾患は、症状が激しい活動期(再発期)と穏やかな寛解期が交互に繰り返されることがあります。

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大腸憩室炎

大腸壁の筋肉を貫通する血管の部分が広がり欠損し、大腸粘膜が内部の圧力に耐えられずに外側に膨らみ、粘膜側から見ると「ほら穴」のようなくぼみが形成されます。この領域に便などが詰まり、それが炎症を引き起こすことで腹痛や下痢が発生します。さらに、憩室は腸壁の筋層がなく薄いため、何らかの原因でその部位の貫通血管が破裂すれば、大出血を引き起こす場合があります。

虚血性腸炎の原因

原因は多岐にわたりますが、主に血管と大腸の問題が関与しています。血管の問題としては、静脈のうっ血による血流低下が挙げられます。大腸の障害の多くは、便秘による腸内圧の上昇が要因とされます。その他の発症要因としては、下腹部の手術、大腸憩室、子宮内膜症などによるS状結腸・直腸の癒着や狭窄、便秘、運動不足などの生活習慣の乱れが考えられます。

虚血性腸炎の検査

初めに、問診を通じて症状や病状の経過などを詳しくお伺いします。虚血性腸炎の疑いがある場合は、血液検査によって炎症の状態や貧血の程度を確認し、それに加えて大腸カメラ検査により炎症部位を直接観察して診断を行います。炎症が強い時期は患部が脆弱になり、穿孔の危険性が高まるため、内視鏡検査には特に慎重さが求められます。腹部エコーやCT検査を診断の補助として行うこともあります。

虚血性腸炎の確定診断

左脇腹や左下腹部で急激な腹痛が生じ、その後に排便があり、下痢便の後に血便が現れる場合、虚血性腸炎が疑われます。症状が虚血性腸炎に関連していると考えられる場合は、大腸カメラ検査を行います。この疾患に特有の「区域性病変」(限られた箇所にのみ病変が見られ、その周囲には正常な組織が存在する)という特徴が確認されれば、虚血性腸炎と診断されます。ほとんどが下行結腸からS状結腸に病変を認めます。診断のための特有な内視鏡所見には、粘膜の発赤、浮腫、びらん、潰瘍などが含まれます。

大腸カメラ検査について

虚血性腸炎の治療

虚血性腸炎は一過性の虚血に由来するため、血流が回復すると通常数日で症状が改善します。従って、治療としては腸に負担をかけず、安静にして経過を観察しながら、数日間の自宅療養で十分です。 ただし、腸管が狭窄しているか、血流低下によって腸管が壊死している場合には、さらなる入院治療が必要と判断されることもあります。

虚血性腸炎の予後

軽症でしたら、腸に負担をかけない消化の良い食事を摂り、数日間の治療で改善が見込めます。一方、中等症や重症では、入院して腸管を休めるために点滴によって栄養を補う場合があります。大腸カメラ検査は炎症の程度と治療の必要性を判断する際の重要な手段であり、当院では豊富な臨床経験を活かして内視鏡検査の専門の医師が、正確かつやさしい検査を行っていますので、安心してご相談ください。

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